研究授業に参加しました(埼玉県戸田市の中学校)

2月6日、埼玉県戸田市の中学校において基礎的な読解力を高めるための研究授業が実施され、当研究所代表理事・所長の新井紀子と研究員の菅原真悟が助言・指導を行いました。

今回の研究授業は、中学2年生の数学を対象に、「にせの定理をさがせ」という題材名の元で行われました。

今回は、リーディングスキルの「推論(提示された文から推論することで、新しい知識を獲得できる)」と「具体例同定(概念または用語の定義を読み、それがどのような状況にあてはまるかを具体的に認識できる)」の2つの能力を育てることを念頭に、A)にせ定理をさがすことができる、B)定理が正しいことを説明できる、ことを目標にしました。

今回の授業では、リーディングスキルテストの受検結果から、具体例同定の結果が低い生徒がそれなりにいることが分かっていたので、必ず定義に立ち返って考えること(具体例同定(理数)の力)が重要であることを意識させました。

 そのうえで、「0は偶数である」「3の倍数は必ず6の倍数になる」といった定理の真偽をクラス全体で考えました。その中で、指導者より定理の真偽を考える際には、必ず定義に立ち返って判断することが重要であることが強調されました。

 その後、グループに分かれて3つの定理「①連続する2つの整数の和は奇数である」「②素数はすべて奇数である」「③6の倍数は必ず3の倍数になる」のうち、正しい定理はどれか、どれがにせ定理なのかを、主体的・対話的で深い学びを通して考える活動を行いました。

授業後の協議会には、市内の小中学校の先生方およそ30名が参加しました。その中で、今回の授業をふまえてどのようにリーディングスキルを高めることが出来るのか、戸田市で導入しているリーディングスキルテストの結果を個々の指導にどのように活かしていけばよいのか、といった議論が活発的に行われました。

協議会の議論を踏まえて、本研究所所長の新井からは、暗記ベースの学習から推論ベースの学習へとシフトさせることが重要であると助言を行いました。また、本時の授業内容は、中学1年生になった時点で、全員ができているべきことだが、実際にはそうなっていなかったことが分かったことにも意味があった。中学校の段階で、推論と具体例同定の能力をきちんとの身に着けることを目指してほしい。推論能力を身につけられるかどうかで、子どもたちのその後の人生が大きく変わるといえるので、何度も学びなおす機会を設けることが重要であるとコメントしました。